kensaku

2014年6月29日日曜日

画期的な胃の薬

私は消化器外科出身だから、当然の事として胃カメラもやっている
大腸内視鏡の『運転技術』を駆使すれば、挿入に苦労する事なんてことはない(^^)v
最新の話題は「機能性ディスペプシア」という病気。
胃が痛い患者さんの4割がこの病気だと言われていて、胃が張る、食べるとすぐに満腹になるなどの症状も、この病気の特徴である。

「機能性ディスペプシア」は、腫瘍や炎症があって神経を刺激して痛むというものではなく【胃の動きが悪くて痛みが生じる】というもの。
そもそも、胃の粘膜は痛みを感じないから、胃カメラの時に組織をつまんで検査しても痛くないわけです。

動きの問題だから、いくら胃潰瘍の強力な薬を長い間飲んでいても治るわけがない。
それが1年ほど前にアコファイドという胃の動きを調整する薬が発売されたことによって、何年も胃薬をのんで治らなかった胃の痛みが、嘘のように治るようになりました。

胃が痛くて胃カメラを飲んでも「大したことありませんねぇ」と言われ続けていた患者さんには、奇跡の薬かもしれません。

2014年6月28日土曜日

天気が悪くなるとおしりが膿む

肛門内から便中の細菌が侵入して、肛門周囲に膿が溜まる『肛門周囲膿瘍』は、なぜか天気が悪くなると多くなるという印象を持っている。
ずいぶん前の大腸肛門病学会で『気圧の変化によって、肛門内からの感染が増加する』というような発表を聴いた記憶があるが、その後同様の発表は見たことがない。

でも、確かにこの何日間
「数日前からおしりが痛くなって、今日は座る事もままなりません」
と這うようにしてやってくる患者さんが増え、診察すると見事な肛門周囲膿瘍。
即座に切開排膿すると、すっかり痛みも軽くなったとの事で
「スキップして帰れるでしょ(^^)v」
なんて、冗談を言ってみたりする。

肛門周囲膿瘍の疑いのある方は、今日中に受診して切開排膿を受けないと、地獄の週末が待っるかもしれませんので、要注意。

2014年6月26日木曜日

痔ろうの手術をためらっている方へ

医者から「痔ろうだから手術をしなくちゃダメ。ほっておくと癌になる」と言われたものの、決心がつかない人へ。

痔ろうが単純なもので、いつも膿や汁が出ている状態なら、通常症状は変化しないので、大至急手術しなくちゃいけないという事ではありません。
ただ、膿の出口が塞がってしまうと、膿が溜まって腫れや痛みが生じるので、【爆弾を抱えて】生活しているようなものです。
また、繰り返し膿をためて切開を繰り返していると、時にはあちこちに穴があいた『複雑痔ろう』になってしまい、手術も大がかりなものになり、傷も大きく、下手をすると機能障害が残ります。
また、複雑な痔ろうを何年も放置していると、痔ろう癌が発生します。
痔ろう癌になったら、肛門と直腸を切断し、人工肛門を作る手術を受けなければなりません。

痔ろうになったら「来週にでも手術」しなくてもいいですけど、できるだけ早めに手術を受けましょう。

2014年6月10日火曜日

胃カメラを受けてみよう

女性の癌で一番多い(死亡者数)は『大腸癌』という話が、数年前からよくマスコミで取り上げられていますが、相変わらず多いのが『胃がん』(女性第三位、男性第二位)です。

胃がんを克服するには、とにかく早く見つけること
大腸がんと比べると、せっかちな性格の胃がんは、進行も早いです。
大腸がんの場合、大腸内視鏡を、何もなければ2~3年に一回受ければ治療効果のある段階で見つけることができますが、胃がんの場合は毎年検査をしていないと手遅れになる場合があります。

会社の検診などで、毎年バリウムを飲んでいる人は安心なのですが、最近景気が悪いせいか「定期健康診断から胃の検査がなくなった」という話も聞きました。

病院で保険を使って検査をする場合、『おなかが痛い』、『胃がもたれる』、『胸やけがする』、『食後すっきりしない』などなど、胃の病気を疑う症状があれば、病気として胃カメラを行うことができます。

身に覚えのある方は、ぜひ胃カメラ検査を受けてください。ちなみに、健康保険で三割負担の方なら、7000程度です。
秋葉原サテライトクリニックでは、大腸内視鏡と胃内視鏡を同時に受ける患者さんもいます。

2014年6月9日月曜日

もっとも日帰り手術の適しているのは『後方低位筋間痔ろう』

肛門の後ろ(背中側)に穴があいていて、膿や汁が出る痔瘻です。
たいていの場合は、それに先立って、肛門の後ろ側におできができて、自然につぶれたり、病院で切開した後に、穴が塞がらなくなったものです。
丁寧に触ると、皮膚の上から、穴から肛門の方向に走っているスジ状の硬い痔ろうの管が指先でわかります。

手術法は簡単。痔ろうの管を縦方向に切開解放してやるだけ。
肛門の後ろ側の切開は、浅ければ括約筋の働きを損なう事は有りません。痛みも安静にして痛み止めを飲んでいたら感じない程度なので、日帰り手術に最適です。
もちろん、手術した直後から激しく活動したら、痛みも増すし出血量も増えますから、できれば数日間安静にしていることをお勧めします。

治療費は、3割負担の方で14000円くらいです。

当院では、週末(金・土)も手術可能ですから、有給休暇をうまく使って日帰り手術を受けることをお勧めします。
下記の写真は、典型的な『後方低位筋間痔ろう』です。→の先端に、膿が出ているのが見えます。



2014年6月2日月曜日

痔ろう癌は怖い

肛門周囲膿瘍で、死ぬほど痛い目に合う。
病院で、切開排膿をうけ、膿が一気に出て楽になる。
這うようにしてやってきたのに、帰りはスキップしたくなる。

痛み止めや、抗生物質をもらって、一週間くらいたつと、何のことは無い、治ったみたい。
そんなこんなで病院へ行くのもめんどくさいから、『無かったことにしよう』と思っても、そうはお問屋が…

何か月して、また同じように晴れてきて、死ぬほど痛い目に合う。
今度は違うところから膿が出て、穴の数が増える。

それでも懲りない患者さんは、穴だらけのおしりを放置して、ごまかしごまかししていると、なんだかいつもとは違う痛みに襲われる。
穴から、透明なジェリー状の粘液が出たりする。
これが有名な『痔ろう癌』の典型例。

痔ろう癌であることが判明したら、速攻手術。
それも肛門から直腸まで全部切り取って、人工肛門をつけるという大掛かりなもの。
そこまでやっても、命が助からないこともある。

切開排膿して痔ろうが治ったと思っても、これは『仮釈放』に過ぎません。
異常な症状が再発したら、すぐに肛門科を受診しましょう。

下の写真は、肛門の背中側にできた、痔ろう癌です。